『トリセツシリーズ』で知られる黒川伊保子さんが、脳科学の視点から子育てを優しくひもといてくれる一冊です。母親の不安や疲れにそっと寄り添い、「それでいいんだよ」と全肯定してくれる温かい言葉に満ちています。見出しごとに内容が独立しているので短い時間でも読めます。読んだあと子どもに優しくなれますよ。
📖こんな方におすすめ
- ワンオペで毎日奮闘しているママ
- 「私の子育て、これでいいのかな…?」とふと不安になるママ
- 子どもにイライラしてしまって自己嫌悪することがあるママ
✅ 感想
「子は母を選んで生まれてくる」p42
「子は親を選べない」という言葉はどこかで聞いたことがあるし、「私が親でごめんね」と思ったことがある方もいるかもしれません。ですが、子どもは母親を選んで生まれてくるという事実を、子どもの胎内記憶をもとに教えてくれます。自分のことを選んで生まれてきてくれたと思うと、子どもへの愛おしさがあふれてきます。イヤイヤ期の子どもにも優しくなれそうです。
「子育てにゼロリスクはありえない」p101
早期教育も、ときには、脳の可能性をつぶす。たとえば、アインシュタインのような世界をひっくり返す物理学の新法則を思いつく脳や、パーソナル・コンピューターという世界を拓いたスティーブ・ジョブズのような度肝を抜くような新発想をする脳は、放っておかれた脳からしか出ないはず。 ――黒川伊保子『子育てのトリセツ』(ポプラ社、2025年)
子どもの習い事や、早期教育をするべきか悩むママも多いのではないでしょうか。黒川さん自身は早期教育はせずに脳の好奇心を育ててあげようという考えをお持ちですが、早期教育のことを否定するでもなく、それを選んでいいのは母親なんだよと優しく語りかけてくれます。自分の思い込みで子どもを育てていいのか、不安になることもありますが、「お母さんが感じたことは間違ってない」と強く後押ししてくれます。子育てにおいて何かを選ぶということは、同時に別の可能性を手放すことでもあります。だからこそ、「納得して選ぶこと」が大事なのだと気づかされました。
「悪意を知るのは13歳以降でいい」p135
12歳までが子ども脳で、13歳から大人の脳へ変わっていくそう。小学校が12歳で卒業なのは脳科学に基づいているんだと思うと面白いですよね。12歳までは、子どもが悪意に触れたとき、親が「あなたは大切にされる存在だよ」と愛の言葉で守ってあげることが大切だそうです。そして13歳以降になると、子どもと世の中の悪意について語り合うことが、子どもが悪意に立ち向かう術を教えることになるそうです。元小学校教員として、私はこの考えにとても納得しました。教育の世界には「安全基地」という概念があります。家庭や学校に安心できる居場所がある子は、困難にも立ち向かいやすくなります。小学生の間は、親が子どもの“安全基地”になってあげたいですね。
「朝ご飯に関しては、脳の言うことを聞いちゃダメ」p175
脳の欲求に従うことが勧められている本書の中で、「朝ごはんだけは例外」というのが興味深いポイントです。低血糖で起きてくる子どもは、甘いものを欲しがりますが、それに応えてしまうと血糖値が急上昇してしまうそう。我が家では朝にシスコーンを出していたのですが、これを機に見直してみようと思いました。
✍️ おわりに
子育てをがんばるすべてのママに、心からおすすめしたい一冊です。
ちなみに、共に子育てをしている夫にも読んでもらったところ、「母親の影響力って偉大やねんな…」と少し寂しそうな表情に(笑)。
パパにはちょっと刺激が強いかもしれませんが、ママにとっては自信と安心をもらえる内容です。
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